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入れ歯が合わないときの対処法|調整・作り直しの判断基準

グループホームや介護施設を運営していると、入れ歯が合わないというご入居者さまからの訴えを聞く機会が増えていませんか?「痛い」「違和感がある」「噛みづらい」といった訴えは、ご入居者さまのQOLに大きく影響し、栄養摂取や日常生活の質を低下させます。

しかし、すべての入れ歯の不快感が「作り直し」で解決するわけではありません。多くの場合は、簡単な調整で問題が解決します。一方で、骨の変化が著しい場合は、新しい入れ歯の作製が必要です。

施設スタッフさまやケアマネジャーさまが、入れ歯の不具合に対する正しい対処法を理解することで、ご入居者さまの快適さを保ち、訪問歯科との効率的な連携が可能になります。本記事では、入れ歯が合わない症状、原因、対処法について詳しく解説します。

入れ歯が合わない症状とは

ご入居者さまからよく聞く訴え

痛みがある

  • 特定の部位での圧迫痛(入れ歯の縁や内面が当たる部分)
  • 食事時の噛むときの痛み
  • 就寝時につけていると夜中に痛みで目覚める

噛みづらい

  • 前歯で食べ物が噛み切れない
  • 奥歯での咀嚼効率が低下
  • 片方だけで噛もうとする偏咀嚼

外れやすい・浮く

  • 食事中に入れ歯がずれる
  • 音がする
  • 喋るときに入れ歯がずれる

異臭・違和感

  • 入れ歯特有の臭いがきつい
  • 装着時に異物感が強い
  • 歯ぐきがかゆい、ヒリヒリする

なぜ症状が起こるのか

入れ歯の不快感は、通常、以下の3つの要因に分類されます:

1. 支持基盤(歯ぐき)の変化

2. 入れ歯本体の経年劣化

3. 咬合(かみあわせ)の不調和

これらについて、次のセクションで詳しく説明します。

入れ歯が合わなくなる主な原因

1. 歯槽骨の吸収(支持基盤の変化)

最も一般的な原因です。

#### 吸収が起こる理由

歯を失うと、支持していた歯槽骨(あご周辺の骨)が機能を失い、吸収(萎縮)します。特に以下の時期に吸収が顕著です:

  • 抜歯後1年目:特に速く吸収する
  • 抜歯後3~5年:吸収速度は低下するが、継続する
  • 高齢になるほど:加齢に伴い吸収が加速

#### 臨床的な変化

入れ歯の製作から数年が経過した場合:

  • 入れ歯と歯ぐきの隙間が生じる
  • 入れ歯が浮き上がる、ズレやすくなる
  • 咬合圧が異なる部位に集中し、痛みが発生
  • 新しい骨の輪郭に合わせて、入れ歯の形状が適合しなくなる

参考:日本補綴歯科学会「義歯の臨床」

2. 体重の急激な変化

体重が変わると、顔貌、特に頬や顎周辺の軟組織の厚さが変わります。

体重減少のケース

  • 病気や食事量低下による急激な減少
  • 入れ歯と粘膜の隙間が増加
  • 浮きやすくなる

体重増加のケース

  • 軟組織が厚くなり、入れ歯の内面が圧迫を受ける
  • 痛みが発生することがある

3. 入れ歯本体の経年劣化

レジン(樹脂)製の入れ歯は、使用に伴う変形が起こります。

主な劣化現象

  • 歯ぐきとの接触面の粗化:吸収細菌が増殖し、異臭・炎症の原因に
  • 人工歯の摩耗:かみ合わせ面が平坦になり、咀嚼効率低下
  • 床(ベース)の変形:長年の使用で若干の変形が生じる
  • 亀裂や破損:落下などで欠けることもある

適切なメンテナンスなしに使用し続けると、これらの問題が加速します。

4. 義歯性口内炎や歯ぐきの炎症

入れ歯が合っていない状態が続くと、歯ぐきに炎症が生じます。

原因

  • 入れ歯と歯ぐきの隙間に細菌が繁殖
  • Candida albicans(カンジダ菌)による真菌感染
  • 不衛生な義歯の使用

症状

  • 歯ぐきの赤い腫脹
  • 痛み、ヒリヒリ感
  • これにより、さらに入れ歯の装着が困難に

炎症が起こると、歯ぐきの厚さも変わり、入れ歯の適合がさらに悪くなるという悪循環が生じます。

5. 咬合平面(かみあわせの高さ)の乱れ

複数本の歯を喪失している場合や、残存歯がある場合、咬合平面がずれることがあります。

原因

  • 製作後の骨吸収が均等ではない
  • 人工歯の摩耗による高さの変化
  • 総入れ歯と部分入れ歯の複合使用時

結果

  • 片側で強く咬む偏咀嚼が生じる
  • その側の歯ぐきに過度な圧力がかかり、痛みが発生

調整で直るケース

以下のような場合は、訪問歯科による比較的簡単な調整で改善できることが多いです。

1. 床の周辺が当たり痛い(辺縁の痛み)

症状

  • 入れ歯の端が頬や歯ぐきに当たる
  • 特定の部位に限定された痛み

調整内容

  • 当たっている部位の削合:樹脂を削り、形状を調整
  • 調整後、滑沢化(つるつるに研磨)

所要時間:15~30分程度

予後:通常、1回の調整で改善。ただし、複数の部位で痛みがある場合は、複数回の来訪が必要な場合も。

2. 咬合の接触点が不均等(咬合調整)

症状

  • 片側だけで噛んでしまう
  • かみあわせが片方に偏っている
  • 物が噛みづらい

調整内容

  • 咬合紙を使用し、接触状態を可視化
  • 不均等な接触点を削合し、均等にする

所要時間:15~20分

効果:咀嚼効率が大幅に改善することが多い

3. 浮きやズレ(維持力の低下)

軽度の浮きの場合、以下の対策で改善できます。

調整内容

  • リベースまたはリライン:床と粘膜の接触面を調整

– クイックリライン(簡易版):訪問先で即日対応可能

– ラボリライン(精密版):歯科技工所での処置が必要(1週間程度)

効果:維持力が回復し、ズレにくくなる

参考:日本補綴歯科学会「義歯の臨床管理」

4. 人工歯の摩耗による咀嚼効率低下

症状

  • 前歯で食べ物が噛み切れない
  • 硬い食べ物が食べられない

調整内容

  • 摩耗した人工歯の交換(歯科技工所での処置)
  • または、歯科技工所での人工歯研磨

所要時間:交換は1週間程度の期間が必要

効果:咀嚼機能が回復

5. 義歯性口内炎の治療と予防

治療内容

  • 抗真菌薬の塗布
  • 入れ歯の洗浄指導
  • 就寝時の義歯除去指導(毎晩、外して休ませる習慣)

予防指導

  • 毎日の義歯洗浄(専用洗浄剤+歯ブラシ)
  • 就寝前の流水での軽いブラッシング
  • 月1回の訪問歯科による専門的クリーニング

これらの指導により、多くの場合、1~2週間で炎症が改善します。

作り直しが必要なケース

以下のような場合は、調整では対応できず、新しい入れ歯の作製が必要です。

1. 骨吸収が著しい場合

兆候

  • 入れ歯の製作から3~5年以上経過している
  • リベース(簡易版)での改善が一時的に終わる
  • 繰り返し浮きやズレが起こる

理由

  • 歯槽骨の吸収が進行し、支持基盤の形状が大きく変わっている
  • 既存の入れ歯では、新しい骨の輪郭に適合できない
  • 何度も調整を繰り返すより、新規作製した方が効率的・経済的

新規作製の流れ

1. 診査・型取り(初回訪問)

2. 試適(2回目訪問:仮義歯の試適と咬合確認)

3. 最終納品(3~4回目訪問:完成義歯の調整)

期間:通常3~4ヶ月(施設との打ち合わせにより短縮可能)

2. 複数の破損や大幅な変形がある場合

破損例

  • 床(ベース)に大きな亀裂
  • 複数本の人工歯が欠けている
  • 落下による変形で、修理では形状復元が困難

修理vs新規作製の判断

  • 単一の人工歯欠損:修理で対応
  • 複数箇所の欠損・破損:新規作製を検討
  • 床全体の変形:新規作製の方が現実的

3. 咬合平面が大幅に乱れている場合

症状

  • 片側での強い痛み
  • 反対側が完全に浮いている
  • 複数回の咬合調整でも改善しない

原因

  • 不均等な骨吸収により、咬合平面そのものが傾いている
  • 既存の入れ歯では修正不可能

対応:新しい入れ歯で、正しい咬合平面を再構築

4. 部分入れ歯→総入れ歯への移行が必要な場合

複数の抜歯が必要になった場合、既存の部分入れ歯では対応できなくなります。

判断基準

  • 残存歯が2~3本以下になった
  • 残存歯が不安定で、保存が困難

新規作製の必要性

  • 部分入れ歯の設計は、残存歯に大きく依存
  • 残存歯本数が大きく変わると、設計変更が必須

放置するとどうなる

入れ歯の不適合を放置すると、複数の深刻な問題が生じます。

1. 栄養状態の悪化

メカニズム

  • 噛みづらい → 食べられない食物が増える
  • 食事量が減少 → タンパク質やビタミン不足
  • 栄養不良 → 筋肉量低下 → 転倒・寝たきり化

2. 義歯性口内炎・歯肉炎

不適合な入れ歯は、歯ぐきへの機械的刺激と細菌増殖を招きます。

悪循環

  • 炎症 → 歯ぐきが腫脹
  • 腫脹により、さらに入れ歯が合わなくなる
  • より強い炎症へ

重度になると、入れ歯の装着が困難になり、食事がさらに困難に。

3. 口臭の悪化

不衛生な状態が続くと、細菌・真菌が増殖し、強い口臭が発生します。このため、ご入居者さまのQOLが著しく低下し、他者との交流が減少することもあります。

4. 誤嚥性肺炎のリスク上昇

噛みづらい食事を無理に飲み込むと、誤嚥のリスクが上昇します。合わない入れ歯の放置は、間接的に肺炎のリスクを高めます。

訪問歯科での入れ歯対応

新聖会では、グループホーム・介護施設への訪問診療の中で、以下の義歯対応を行っています。

定期訪問時の入れ歯チェック

月2回の歯科医師訪問時

  • 入れ歯の適合状態の確認
  • 浮き、ズレ、痛みの有無を確認
  • 簡単な咬合調整が必要な場合は、その場で対応

月4回の歯科衛生士訪問時

  • 義歯の専門的クリーニング(プラーク・着色・歯石の除去)
  • 衛生状態の確認と指導
  • 義歯性口内炎の予防指導

調整が必要な場合

1. 簡易的な調整(訪問先で完結)

– 辺縁の痛みの削合

– 簡易リベース(クイックリライン)

– 軽度の咬合調整

2. 精密な調整(歯科技工所との連携)

– ラボリライン(精密リベース)

– 人工歯の交換

– 床の大幅な修復

期間:通常1~2週間で完成

新規作製が必要な場合

骨吸収が著しい、複数の破損がある、などの理由で新しい入れ歯が必要な場合:

1. 初回訪問:診査、印象採得(型取り)

2. 2回目訪問(1~2週間後):試適・咬合確認

3. 3回目訪問(さらに1~2週間後):最終納品・細部調整

新規作製期間中のご入居者さまの食事対応については、栄養管理スタッフと協力し、柔らかい食事形態を検討します。

料金の目安

入れ歯の調整・修理・新規作製にかかる費用は、以下の通りです。あくまで一例ですのため詳細は診療時に歯科医師にご確認ください。※保険診療の場合、患者様負担は以下の1〜3割程度です

| 処置内容 | 費用目安 |

|———|———|

| 辺縁調整(1~2箇所) | 1,000~3,000円 |

| 咬合調整 | 2,000~5,000円 |

| 簡易リベース(クイックリライン) | 3,000~5,000円 |

| 精密リベース(ラボリライン) | 10,000~15,000円 |

| 人工歯交換(1歯) | 5,000~8,000円 |

| 義歯新規作製(総義歯) | 100,000~200,000円 |

| 義歯新規作製(部分義歯) | 80,000~150,000円 |

※保険診療の場合、患者様負担は上記の1〜3割程度です

※訪問診療の場合、別途訪問費用がかかることもあります。

まとめ

入れ歯が合わないという訴えは、施設スタッフさまやケアマネジャーさまが日常的に対応する課題です。重要なのは、症状に応じた適切な対応を早期に取ることです。

調整で対応可能な場合:訪問歯科による簡単な調整で、ご入居者さまの不快感がすぐに改善します。

新規作製が必要な場合:骨吸収の程度や破損の程度を判断し、新しい入れ歯で根本的な解決を図ります。

いずれの場合も、継続的な専門的管理が極めて重要です。新聖会では、定期訪問による継続的な義歯管理を通じ、ご入居者さまが快適に食事し、良好なQOLを維持できるようサポートしています。

入れ歯の不具合でお困りの際は、新聖会までご相談ください。ご入居者さまの個別ニーズに応じた対応提案させていただきます。


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